小学校からの寄り道がきっかけで仲良くなったおばあちゃん。
息子さんもご主人も亡くなってしまい
いまは一人暮らしだと話してくれた。
薄暗い部屋で囲炉裏を抱えるように
ちょこんと座っているおばあちゃんが小さくみえた。
行くたびにぬれせんべいをすすめてくれる。
ふとトイレに行きたくなり
教えてもらったとおりに家の奥へと向かい
トイレに入ると
掃除するのが億劫なのか、
ひとりぼっちで気にならなくなっているのか汚れていた。
なんだか胸がジクジク痛んできて
さびしい気持ちでいっぱいになった。
その日は家に帰ると真っ先に母に
そのおばあちゃんの話しをした。
「つぎ行くときにうちの掃除道具をもって行っていい?」
そうお願いした。
そして、数日たってから母が準備してくれていた自宅のトイレ道具を持参し
おばあちゃんの家に向かいベルを鳴らす。
何度鳴らしても
大きな声で
「こんにちは」と声をかけても
まったく応答はない。
おばあちゃんの声はいっさい聴こえてこなかった。
つづく
石原奈津子
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