掃除道具を持参し、近所に住む一人暮らしのおばあちゃんの家に向かったけれど、
なんど自宅のベルを鳴らしてもおばあちゃんの声はしなかった。
それから数日つづけて行ってみたけれど、
様子はまったく変わらず人の気配はしなかった。
そんなある日、母が近所の民生委員の人から
「おばあちゃんは総合病院に入院しているよ」と聞き急いで帰ってきた。
それから母と一緒に病院にお見舞いに行ったけれど、おばあちゃんは絶対安静な状態で個室で眠っていた。
数日たって病院に行ったときには、
おばあちゃんはこの世に別れを告げたあとだった。
おばあちゃんの顔を鮮明に思い出せるかと言われたらおぼろげにしか思い出せないし、
一緒に過ごした時間は短かった。
でも今でも「ぬれせんべい」を見ると
おばあちゃんを思い出す。
おばあちゃんが出してくれていた
ぬれせんべいは、もともとは
「せんべい」だったけど湿気っていただけかもしれないなと、おもうと
「せんべい」を見てもおばあちゃんを思い出す。
今は「無縁墓」に眠っているときいたけど、間違いなく私はおばあちゃんとご縁があったのだ。
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